姿勢制御における感覚の影響を考える
こんにちは、ひろかずです。
どんな環境でも姿勢を安定して保つことができるのは、感覚入力によって運動が調整がされているためです。
この運動の調整とは、姿勢保持だったり、歩くことだったり、ものを掴んだり握ったりなんかです。
脳卒中後の姿勢制御の問題を考えると、
・視覚依存を強める
・頭頸部の過剰な固定
・体性感覚の低下
これらは、多くの症例で経験するかと思います。
日々の臨床においては、感覚の相互作用を考えつつ、セラピーを展開してことが大切です。
この「感覚」について、どのように考えればよいかは悩むことが多いかと思います。
本日は、姿勢制御における感覚の影響について、ポイントをおさえ考えていきます。
姿勢制御における感覚の影響
感覚入力は、フィードバックとフィードフォワードメカニズムの両方で使用されます1)
入力された感覚情報が、一方向だけでなく、時には相互に関連しあいながら姿勢の安定に寄与しています。
まっすぐ立つためには、重力を知覚し、身体の位置関係を感じ、意識せずとも垂直性を保つ必要があります。
また、何かにつまずいて転びそうになれば、瞬時に身体を適応させ、転ばないようバランス戦略が選択されます。
このように、外部環境を知覚し、空間における姿勢の安定性・垂直性を保つためには
・視覚
・前庭
・体性感覚
の統合が重要です。
フィードバックとフィードフォワード
雪道で転んだことはありますか?
転ばないで雪道を歩くって大変ですよね。
ここから感覚のフィードバックとフィードフォワードを考えてみます。
なるべく簡単に理解できるように考えてみます。
雪道を歩いてズルっと滑ると、急激な頭部の揺れ(前庭)&視覚の変化がフィードバックされます。
四肢の位置関係も変化しますので体性感覚もあわせてフィードバックされるでしょう。
その情報をもとに、瞬時に転ばないように運動の調整がなされます。
調整が間に合あわなければ、転倒してしまいます。
では、少し考えてみてください。
積雪地域で育った人と全く積雪のない地域で育った人、どちちらが転ぶ可能性が高いでしょうか?
おそらく、後者ではないかと思います。
小さい頃に積雪地域で育った人は、
・滑って転びそうになる(転んだ)感覚
・転んだときの痛みの感覚&記憶
から
・どのようにしたら転ばず(運動)できるか
を学んでいます。
言いかえると、転ばないようにフィードバックとフィードフォワードを常にアップデートしてきた、みたいな感じです。
こうした、感覚運動経験の学習が、知識や記憶になり、どのように対処したらよいかの予測につながります。
全く積雪のない地域で育った人は、
どのように対処してよいかの予測ができないため、転びやすい可能性が考えられます。
こう考えると、姿勢制御における感覚入力の影響は、経験や学習・記憶など個別性は無視できないかと思います。
【脳卒中】姿勢制御のリハビリ
個別性があることを大前提に、運動(再)学習できるようにサポートしなければなりません。
感覚運動の観点から仮説的に考えてみると、
脳卒中前の感覚運動経験の記憶を頼りに身体を動かそうとする(フィードフォワード)
脳卒中後の感覚運動経験のズレ(フィードバック)
このズレが大きいほど転倒の可能性につながると考えられます。
不足している感覚情報はなにかを考えつつ、ケースの反応や表出を注意深く観察してきます。
また、発症前の歩き方(速い遅い、非対称など)、性格(せっかち、穏やか、意欲など)、職業(立ち仕事、手作業、事務など)これらが重要な手がかりになることも少なくありません。
包括的に捉え理解を深めていけるとよいかと思います。
まとめ
本日は、姿勢制御における感覚の影響について考えてみました。
「感覚」というと、目にみえないため、「難しい」「理解しにくい」となりがちかと思います。さらに個別性が加わると難解になります。
難しいことを大前提に、一人ひとり丁寧に分析・考察しながら理解を深めていく姿勢が大切かなと思います。
本日は以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References