バランス戦略:3つのストラテジー
こんにちは、ひろかずです。
立っている姿勢において、安定してバランスを保つためには3つのストラテジーが大切です。
ストラテジー = 戦略
ですが「戦略」というからには、「目的」のようなものがあるはずですよね。
なにを「目的」とした「戦略」なのでしょうか?
答えは「転ばない」ということです。
転ばないために、身体の揺れを最小限にとどめておくために3つの戦略が役立ちます。
疾患問わず考えることができる大切な視点かと思います。
3つのストラテジー
外部環境や課題に応じて、視覚・前庭・体性感覚の重み付けを変え、転ばずに立っていることができます。
立った姿勢で、足の裏の荷重をつま先↔踵と移動してたらどうなりますか?
多くの方は、Ankle strategyで適応できるかと思います。
では、脳卒中後のケースではどうでしょうか?
・股関節の伸展が不足している
・足底の体性感覚が乏しい
・足関節背屈の制限
これらの要因が複合し、脳卒中後のバランス戦略はHip strategyを呈していることが多いです。(ここに挙げた以外の要因もあるかと思います。)
Hip strategyは、上半身と下半身の揺れる方向が異なり、身体の揺れも大きいです。(Ankle strategyは同方向)。
揺れの速度によっては、頭部も大きく揺れるかと思います。
ケースによって、上肢の代償活動が強くなることもあります。
・どんな感覚を手がかりにして立っているか
・下半身と上半身(上肢・頭部を含む)の位置関係
このへんは観察・分析するうえでポイントかと思います。
安定性限界(Stability limit)
安定性限界を考えてみましょう。
支持基底面上(立位では足底)で、COMはどこまで動けるでしょう?
立った姿勢で、重心を前後と左右移動してみてください。
COMの軌跡は、円錐に近い形で移動するのではないでしょうか。
脳卒中後のケースではどうでしょうか?
・麻痺側の股関節外転の弱化▷麻痺側にのれない▷左右差あり
・麻痺側底屈が強い▷麻痺側前方にのれない▷前後差あり
どのくらいCOMの移動ができるか確認しておくと、歩いたときにどこで転ぶ危険性があるのか予測することができます。
実際はストラテジーってわかりにくい?
日々の臨床において、3つのストラテジーをきっちりと分けて考えることは難しいのが実際かと思います。
動作が複合的であればなおさらです。
「このケースはHip strategyだけ使ってバランスをとっています」なんてことはほぼないですよね。
多くは環境や課題によって、運動のバリエーションが変化しますし、動きに多様性があることは、ポジティブなことと考えていいかとおもいます。
「どの戦略が優位か」と「どう転ぶか」の予測ができることが大切と思います。
既往歴や合併症で考えてみる?
例えば、
・股関節疾患のケースではどうでしょう?
Hip strategyは働きにくい▷Stepping strategy優位かもしれません。
・糖尿病が既往にあるケースではどうでしょう?
経過がながければ足部の感覚鈍麻▷Hip strategy優位かもしれません。
・外反母趾や足部変形がケースではどうでしょう?
アーチの機能が乏しく安定性限界が狭い▷Hip strategy優位かもしれません。
あくまで仮説ですが、既往歴や合併症もバランスを考える大事な情報になりそうです。
Sway back姿勢と腹横筋
Sway backの立位姿勢は、フラットな立位姿勢に比べて、腹横筋の筋厚が減少します[3]
Sway backの立位姿勢は、Hip strategy優位と考えることができますよね。
つまりHip strategyと体幹の関係性を考えることがポイントと言えます。
まとめ
今回は、バランスを保つ上で大切な3つのストラテジーについて考えました。
正常運動との比較や、既往歴・合併症との関連等、むずかしい要素も多いかと思いますが大切な視点です。
自分の担当するケースに落とし込んで考えていくと、セラピーの考えが深まると思います。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうござました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
- Michelle H.Cameron,Linda Monroe. Physical Rehabilitation for the Physical Therapist Assistant – E-Book.2014.195-196
- FAY B. HORAK.Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?Oxford University Press on behalf of the British Geriatrics Society.2006
- Reeve A et al.,Effects of posture on the thickness of transversus abdominis in pain-free subjects.Manual therapy.2009